投資の時に会社を設立するなら合同会社と言っていたけども、自分は有限会社で運用している。 で、有限会社って何なの?という話です。
昔の会社法では法人設立の難易度が高かった
有限会社は今のLLC(合同会社)に近い役割として分類された。 今でこそ株式会社は資本金一円で設立できるが、昔は下記のような高いハードルがあった。
株式会社の設立要件(商法改正前)
- 資本金1,000万円から(平成2年の商法改正より)
- 発起人7人以上
- 3人以上の取締役
- 取締役の任期は最長2年
- 取締役会の設置義務あり
- 監査役の設置義務あり
- 決算公告の義務あり
元々上場企業用の(株の売買を前提とした)システムのため、そこまで大規模ではない株主構成用に有限会社というカテゴリが作られた。
有限会社の設置要件(商法改正前)
- 最低資本金は300万円(平成2年の商法改正より)
- 発起人1人以上
- 出資者の数は50人まで
- 1人以上の取締役
- 取締役の任期はなし
- 取締役会の設置は不可
- 監査役の設置義務なし
- 決算公告義務なし
- 社債の発行はできない(特例有限会社はできる)
他にも有限会社は上場はできない、株式交換による子会社化はできないなど簡易的なものであった。
国の思惑通りにはいかず・・・
上場企業などの株主数が多い会社用に株式会社、小規模企業用に有限会社のカテゴリを作ったが、法人化する人達はどうせなら株式会社がいいと金を払ってまで名ばかりの発起人を募り、自分の親や親戚を取締役に選任するなどして無理やり株式会社を作る会社がほとんどで、あまり有限会社を設立する会社がなかった。 一段下に見られるだけの存在でしかなかったんだよね。 平成2年の商法改正で最低資本金が大幅に引き上げられ、平成8年までに最低資本金を満たさない会社は強制解散させると割と無茶なことをしたけども、箔をつけるためにも多少無理して株式会社を設立する経営者が多く、とにかく有限会社は人気がなかった。
平成18年の商法改正で有限会社は廃止
平成2年の商法改正も全く効果はなく、有限会社の人気は翳りを見せるばかりか地面を這いずる結果となったので平成18年の商法改正で資本金の制限、発起人の人数は廃止され、2年に1回の役人の選任は10年に1度となり、有限会社は廃止された。 会社=株式会社となったわけだね。
じゃあ今の有限会社は?
商法改正で全ての有限会社は株式会社として扱われることになった。 が、株式会社への変更登記をしなければ今までの有限会社通りとして扱われる(特例有限会社)。 取締役の任期制限もなく、決算の広告義務もないなど簡易的に運用ができる。
一度株式会社への変更登記をすると戻せない
有限会社は株式会社へは簡単に成ることができるが、一度変更すると有限会社に戻すことはできないので、有限会社は年々減り続けている。 なので有限会社は平成18年以前に設立されたある程度社歴の長い会社とも言えるわけだね。 それに印鑑や通帳の作り直し、社名変更の通達などめちゃくちゃめんどくさい挙句に何のメリットもないので、今更株式会社に変更する会社はほとんどないんじゃないかな。
有限責任
イギリスでも法人といえばLimited.(有限会社)。 そもそも有限会社は有限責任って意味でもある。(株式会社も合同会社も同じ) 出資者の責任は有限であり、会社が負債を返えせなくて倒産しても出資者には返済責任を問われないという意味。 逆に合名会社などの無限責任会社は出資者が会社の損失に対して全責任を負わなければならない(負わなくても良い出資者も設定できる)。 こういう出資者を募って組織を作る会社の原型ができたのは大航海時代に出資者を募り、責任を分割して香辛料などを仕入れに行かせたのが始まり。 いち貴族が全ての責任を負い、全財産を投資して船が沈んだらあっさり破産してしまうから、そうならないようにリスクも儲けも分散したわけだね。
日本の中小企業は事実上無限責任
とはいえ、日本の中小企業は会社は出資者と経営が分離していない。 なので銀行借入するときもその借入に対して経営者は連帯責任を負わされるので、有限責任でも何でもなく事実上無限責任を負わされる。 株主規模の大きい会社じゃないと有限責任にはならない。
全く無意味な骨董品
今は合同会社制度もあるので有限会社を元々運用している以外、何とか無理矢理手に入れて使うほどの意味もメリットもない。 自分はたまたま休眠会社にしていた有限会社があったからそれを個人投資会社として使っているけど、なければ合同会社を設立してた。 もう作れないと思うと勿体無いし、みたいな何の合理性もない行為。 合同会社制度がある以上メリットは一つもありません。 これから個人投資会社を設立する人で1人または家族で運用する人は設立費も安い合同会社にしましょうね、という身も蓋もない話でした。